2012年11月25日日曜日

ピクルス通信no.181 霜月のフロイト

週に一度、銭湯に通っている。

「篠木温泉 満天望」を使う。

家から近いこと、平日は混雑していないこと、露天風呂が充実していること、清潔感がほどほどであることなどが理由。



ただ湯に浸かっているだけじゃあない。

裸一貫で風呂まわりの思索を積んだり、裸で何か出来やしないかと忙しい。

それらを私はフロイト(風呂意図)と呼んでいる。

11月19日のフロイト。


◯ チャンネル権はいっさい与えられぬまま、完全受け身でテレビを積極的に楽しむ◯


露天風呂に大型テレビが備えられている。

チャンネルは定められている。

「リクエストはお気軽にフロントまで」なんてシステムもない。

だいたい私が浸かる頃は21時台以降。

やっているのはニュースかバラエティぐらいだ。

この日は後者。くりぃむしちゅー、ネプチューン、チュートリアルがゲストを交えてトークをお送りする「しゃべくり007」(日本テレビ系列)。

普段、この番組はもとよりバラエティを見ることがない。嫌いではない。しかし最近は「見て笑うことがわかっている番組は見ない」という極論に振り切れているため見ることがない。よって銭湯は私とバラエティ番組をつなぐ貴重な仲人となっている。

裸になると、私はよく笑う。

この日のゲストは岐阜出身のモデル・女優、鈴木ちなみ(写真集『ちなみに、、、。』は30日発売予定)。

時代劇に出演したいがために耳にピアスは開けないという(演じてみたいのは茶屋娘)。

好きな歴史上の人物を聞かれた彼女は、やや回答に困ってから声を絞り出すようにして答えた。

「ジャンヌ・ダルク」。

ワッハッ!

裸で、一人で(でも周りに人はいた)、声を出して私は笑った。そんなに面白いか?

どうやら服を脱ぐと、笑いに対する武装解除も進むようだ。

同じくゲストの市川海老蔵が「しゃべくり007」のメンバーとやってみたいことに「ババ抜き」を挙げ、「では海老蔵さんがトランプをきって下さい」と頼まれると、やや照れた感じで「困ったなぁ」とつぶやいたことにまで爆笑してしまうほどに。

人は、裸になるとよく笑う。



満天望を贔屓にする第一の理由は休憩室の充実ぶりにある。

ほどよい温度に設定された部屋には暖色の照明がまどろみ、リクライニングシートが30席ずらっと並ぶ。

貴賤を問わないプレミアムシートのお時間です。

ここで湯上がり読書をすることが無上の悦び。



満天望への道すがら、ブックオフ19号春日井中央店の文庫コーナーで拾い上げた一冊。

ディスクガイドほど湯上がりに適した本はない。

まだ聴かぬディスク名・ジャケット写真が、リフレッシュされた頭にするする入ってくる。

『ジャズ名盤ベスト1000』安原顯・編 (学研M文庫)
20名が各々の切り口でジャズの醍醐味を伝える50枚を選定する。20×50=1000。

定番の名盤は外す、という方針。

偏りをよし、とする方針。

選定にあたった先生方は以下の通り(敬称略)。

青木和富岩浪洋三大村幸則岡崎正通小川隆夫児山紀芳後藤雅洋、斉木克己、佐藤秀樹清水俊彦杉田宏樹瀬川昌久高井信成土倉明寺島靖国、藤本史昭、村井康司悠雅彦、安原顯、斉藤宏嗣

選者は五十音順に登場する。先鋒は誰としてトリはかの大先生に、といった気を使わなくて済む。ただし斉藤宏嗣・選「優秀録音ベスト50」は特別枠としてラストに来ている。いや、この本の編者である「や」の安原顯も「ゆ」の悠雅彦の後に来ていた。この稀代の編集人は、ブックガイドでもトリを持とうとするのが見受けられる。

選者のプロフィールの記載がない。名前を知っている人にとっては無用であるし、名前を知らない入門者にとっては余計な色眼鏡をかけずに済む。

それにしても、、、、。

ディスクガイドを目に通すたびに思う。

知らない名前や盤を教えてもらう案内料と、自分の愛聴している盤がどう擁護されているかを確認し「私のセンスもなかなかのものよ」と悦に入る安心料と、いったいどちらに金を払ったのか。


若竹純司(客)

0 件のコメント:

コメントを投稿