2012年4月1日日曜日

ピクルス通信no.147 あやのホンの映画と音楽

NHK連続テレビ小説「カーネーション」が3月31日に最終回を迎えた。

明けて4月1日に「嘘でした」と再開するのをどれだけ願ったことか。

小林薫、尾野真千子、ほっしゃん。ら、役者の演技力に目を見開かされた人も多かろうが、それ以上に、このドラマの魅力の大部分が渡辺あやの脚本に負っていたことは衆目の一致するところ。

「ささいな出来事にひそむ人生の真実」といったものを感じさせ続けてくれたように思う。


私たちが知る、渡辺あや脚本作品の数は、決して多くはない。

その中で最もポピュラリティを獲得しているのは『ジョゼと虎と魚たち』だろうか。私にとって、使われた音楽と共に強く印象に残っている作品が別にふたつある。

くらもちふさこの漫画が原作の『天然コケッコー』(山下敦弘監督 / 2007年)では、海の近い美しい田舎町を舞台に、思春期を過ごす少年少女(主演の夏帆と岡田将生のみずみずしさといったら!)の繊細な心の揺れ動きを、日常生活が刻む断片的なエピソードを積み重ねながらきらきらと描いてみせた。

過ぎ行くもののなかの過ぎ行かぬもの。その輝き。



音楽を担当したのは2011年に40歳の若さで亡くなったレイ・ハラカミ。

「こもっているようで浮遊感のあるサウンドと、どこか叙情的なメロディ」「独自の清廉さと繊細さが織り成す、例えるなら水彩画のようなタッチの音楽」などと評される柔らかな電子音が、劇中の自然の風景とぶつかることはなく、とはいってもべったり寄り添うでもなく、一定の距離感で映画に異彩を箔していく。彼の音楽なしには、この映画を見終わった後にもたらされるお伽噺感(この映画でしか味わうことの出来ない世界のイメージ)は生まれ得なかったように思う。

『メゾン・ド・ヒミコ』(犬童一心監督 / 2005年)は渡辺あやのオリジナル脚本。ゲイの老人ホームを舞台にし(これはプロデューサーの持ち込み設定だったそう)、柴崎コウ演じる主人公の心の葛藤を軸に映画は進行する。

ここで描かれる人間関係(主人公がホームで再会するのは幼き日に自分と母親を捨てたゲイの父親。主人公と次第に惹かれ合う美しき青年はその父親の恋人でもある。)と感情は、異質である以上に激しい。むきだしの感情がドキリとさせられる台詞の畳み掛けで我々をさらって行く。


音楽は細野晴臣。犬童監督はDVDの特典解説で「予想していなかった音楽がつけられてはじめ戸惑うのだが、しかし、なるほど、と唸らされる」というようなことを語っていた。ストーリーを補完し、さらなるイメージを付与する音楽。生楽器と電子音とが境目なく紡がれるそれは、様々な土地と時代の音楽を知っている人だからこそ生み出すことができる無国籍な風情をたたえる。映画は全編にわたりビビットな色調で占められているのだが、それと細野氏のデリケートな音楽とが心地良いコントラストを保っているように思う。このサウンドトラックCDは必ずやインテリアとしても活躍するだろう。


若竹純司

3 件のコメント:

  1. NHK連続テレビ小説は観ておりませんでした。
    若竹さんはいつもご覧になるのですか。お詳しいですね!
    細野さんの音楽、聴いてみたいなぁ♪
    kubota_toyoaki

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  2. あ、すみません。
    このyoutubeが細野さんでしたね^^;

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  3. kubotaさん

    毎度おつきあいありがとうございます。

    実は僕もこの連ドラを見始めたのは今年に入ってからなのです。渡辺あや脚本だと知ってあわてて見始めたのですが、それからは毎日の生きるよすがでした。連ドラでここまでぐっときたのは向田邦子脚本の「寺内貫太郎一家」以来です。

    総集編が5月3、4日に放送されるようですので宜しければどうぞ!
    http://www9.nhk.or.jp/carnation/news/index.html#dai_01

    『メゾン・ド・ヒミコ』は一見の価値ありです!テーマが微妙なところを扱っているので感情移入は難しいかもですが、他では得難い質感の映画です。
    それに私のツボである「親子の和解」も話の要ですし(笑)
    そうですねyoutubeの最初のほうに流れているのが細野さんの楽曲です。これは序の口なのでぜひご覧になってみてください!音楽、色彩感覚を味わうだけでも価値ある一本だと!!

    そういえば、小牧の「ほていや」ですが知りませんでした!1日300パック売れるとはすごい!これは行かねば!情報ありがとうございました。

    若竹

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