2011年7月24日日曜日

ピクルス通信no.111 落とし話

「メール来てるかな。来ていてもツタヤさんかゲオさんからだろうけど」

仕事をあがって携帯電話をチェックしようと鞄をまさぐるのだけれど、見当たらない。

またまたやってしまった。

昼休憩に行ったスターバックスに忘れてしまったに違いない。

どっしりと腰を落とせるソファで昼寝するのが常で、ポッケからすべり落としてしまうのだ。

この2ヶ月のあいだで3度目。限度を超えている。

自分にあきれきって店へ向かう。

昼にオーダーした「本日のコーヒー(S)」のレシートを提示すれば2杯目は100円で飲むことができるため、たまに仕事上がりにおかわりをしに行くのだが、この時ばかりは「そういった用事ではなくてですね」と言わんばかりにはにかんで入店。

「へへ。すんません、携帯電話の落とし物ありませんでしたか」

「あっおにいさん。またですねっ。ありましたよっ」

いつもと変わらぬ最高の笑顔。罪人には、まぶしい。

わざわざビニール袋で封をした状態で保管してくれていた。

「すんませんねぇ、何度も何度も。反省文書いてきます」

「ほんとですか〜ハハハッ。あっおかわり飲んでいかれます?はい、ありがとうございますっ100円ですっ」

そんな笑顔で僕を見ないで。


本当に反省しているのだ。だから、家に帰って、書いた。

反省文
私は、スターバックス栄チェリープラザ店様にケータイ電話を三度も置き忘れたことを深く反省し、四度と迷惑をかけることのないよう固く誓います。
平成23年7月18日 若竹純司

名刺サイズのメモ用紙に書いた。これを財布にしのばせとく。

次回訪れた時にもし同じおねえさんがレジをしてくれたとき、そしてもし反省文のことを覚えていて「ちゃんと書きました?」とちょっといぢわるな目くばせで言ってくれたとき、「ええ、もちろん」とスッと差し出すのだ。はにかんでな。

※ ※ ※

ロスト・アンド・ファウンド
Jimmy Scott : Lost and FOUND

「落としたっていいんだよ」

そう慰めてくれるかのように、ジミー・スコットはどんな曲でもテンポをぐーっと落として歌う。

彼は特異体質のために身長はおよそ150センチで止まり、声変わりも訪れなかった。その中性的なソプラノボイスは誰にも似つかないもので、僕には官能的にすら聴こえる。

69年、72年に録音された作品。スティービー・ワンダーの歌唱によってミディアムアップデンポの印象が強い《For Once In My Life》も極端にテンポを落として歌われているのだが、別曲として認識してしまうほど哀感のあるバラードに生まれ変わっている。《Day By Day》もまた。驚く。

※ ※ ※


数日後。昼休憩に向かった。

あっおねえさん!

「こんにちはー。はい、本日のコーヒー、ショートサイズですね。300円になります。マグでご用意して宜しいですか?」

、、、、、、向こうはそんな暇ないのだよ。何を期待しているのやら。


刀はいつでも抜けるよう鞘に収めておく。


若竹真剣

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